社長の部屋CEO's ROOM

03.随想編

生きていく美学

2021.08.16

 人にはそれぞれ美学があるように思う。どうしてもこだわる習慣だったり、外観だったり、交流だったりはあなたにもあるだろう。行動の美学もある、礼儀作法もあれば所作もある。ある人は人のそれを見て気づくし、ある人は気づかない。美学を持つ人にとってそれを侵す人は蔑視し、腹立たしくさえ思う。

 

 食事作法の美学であれば共に食卓に就くのが不快に感じたりする人もいる。しかし、人の美学を侵している人はそのことに気づかない。人の集まりが社会であり、同じ美学を持つ人たちが集まりやすい。民族には民族の美学があり、小さな未開の民族と侮れば極めて高い誇りを持った美学を持って生きている人たちも多い。暴走族には暴走族の美学があり、僧侶には僧侶の美学がある。お互い相手の領域に踏み込まないで済む日常は平穏な日々だが、一旦相手の領域を侵してしまうと軋轢が激しい。

 

 我々は日常、家族や趣味で同じ美学を共有する人たちの中で生きることに安らぎを得るが、余り美学など意識もせずに選んでしまっていることはないだろうか。特に日本人は村社会であり、同じ作法や風習などで美学を共有する人が多いが、一度海外の社会に足を踏み入れると様々な風習の違いと接して戸惑ってしまう。常識も美学も国、民族、宗教で実に様々だ。そこに常識が違うなどという日本人は浮き上がってしまう。

 帰属する会社にも会社の美学がある。その最も象徴的で表現しているのが会社の社是や経営理念ではなかろうか。企業はこの領域で経営者が表現する自社の美学で行動している筈である。企業相互間も相性が合うという企業文化もあれば、ドライなビジネス関係以上に長く付き合っても深化しない企業関係もある。これは企業文化と呼ばれる企業美学の違いに由来する。特に日本のビジネスは、一般的に個人社会と同様に人間関係が重要だ。お互いの違う美学で礼を尽くしても理解されず、相手の美学に気張りを欠けば非礼となる。

 

 個人のネット社会ともなるとこの少しの非礼が許されず、いや誇張され非難され、限定社会や限定時間に限らず広く付きまとい人を追い込む。

 

 人にはそれぞれの生き方美学がある。お互いが同じ村社会のみで生きていた時代は相互理解も深く寛容さもあったが、ネット社会ともなると、交流が広くて浅い一方で、美学の違いが見えてしまい拗れてしまうと、執拗に逃げ場もない所に追い込む社会になる。

 生きていくには人は美学なくして人間らしく生きることはできないと思うのだが、それは相手の美学を尊重し認め合うことでもある。ますます拡大し難しさも感じるネット社会だ。

 

2019.3.9記す

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