熊本が生んだプロ野球界の巨人川上哲治氏が10月末に93歳で亡くなった。熊本工業からその当時バッテリーを組んでいたキャッチャーの吉原と職業野球草創期の巨人軍に入団した。巨人軍は吉原を欲しかったが吉原が川上と一緒ならと条件を付けたからだと言われている。吉原は戦死し戦後に一人巨人軍に復帰することになった。
氏のエピソードは幾つもあるが「打撃の神様」、「ボールが止まって見えた」など川上に超人伝説を語るものがいくつも残っている。11月3日の朝のテレビ放送で張本勲氏が「監督時代はとにかく怖くて近づけなかったが、引退後の交流では実に穏やかな人だった。」と語っていた。管理野球、冷徹な采配、厳しい、冷たいと言われることも多い人だったが実態は優しく穏やかな人だったと家族も語っている。
張本が引退して「座右の銘を何か一つください」と言ったのに対して貰った色紙が「一打一生 これほどの努力を人は運という」と書いてくれたらしい。この言葉を見て急ぎメモ取った。ジーンと胸が熱くなるのを覚えた。私もよく「運がいい経営者と呼ばれたい」ということがある。それは「苦労ばかり多い人だった」とか「失敗してかわいそうに」など言われるに比べればはるかにうれしい。経営も野球も運で成績が遺せるなど絶対ないと思う。苦労人と思われるより軽やかになって見せて運がいいと羨ましがられてこそプロだと思う。打撃に一生をかける努力して出した結果を人は運と言う、安打製造機と呼ばれた張本だから共感できる言葉として贈ったのだろう。達人は達人を知るというから。鬼とか冷血と言われて巨人軍の連続V9を達成した氏が選手に求めたことは自らが実践した努力に比べればまだまだ甘いものだったのだろうと、私もせめて凄まじい努力の人生であったであろうことは理解してあげたいと思いながら、改めて「運が良かった経営者だ」と言われる経営者で終わりたいと思った。
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